| 現代人の生活環境、ライフスタイルは数千年前からは極めて大 きく激しく変わっているというのに、人間の肉体的、生理的仕 組み、つまりDNAのプログラムは何十万年も前から変わって いない。 本来ヒトの進化の過程になかった、夜間労働や高速移動による 体内時計の調整、生物学的年齢では成人で巣立たなければなら ないのに、それができない社会的、経済的状況や住環境、ある いは高層住宅の高速エレベーターによる急激かつ頻繁に繰り返 される気圧や磁気の変化・・・。 それらはDNAのプログラムにはなく、地質学的時間からみれ ば私たちの当分先の代でも、ヒトは適応しきれないのであろう。 このDNAのプログラムと現代人のギャップが、心身ともに現 代人のストレス、現代生活のジレンマの一つとなっているもの とおもわれる。 私はこのギャップを少しでも埋められるような、キャパシテイ のある現代ホモサピエンスのための住まいづくりをこころがけ たい。 それには生物学的アプローチによるDNAのプログラムを読み とり、それに沿って現代人住居は如何なるものにしたらよいか を探り、現代人住居づくりを実践していきたいとおもっている。 それにしても中世の時代に比べて、現代はあまりにも視覚優先で はないだろうか。 |
テレビの食い物番組を見ただけで、うまいものを食べたつもり、 アクション映画のカーチェイスを見ただけで、激しいドライビ ングをしたつもり。そこには食欲をそそる香りも、加速度が肉 体に与える躍動体感もない。 暗い教会で聴くオルガン曲による精神の高まり、湯上がりの身 体のほてりが冷めていく皮膚感覚の心地よさ・・・。 私たちはあまりにも視覚に支配され、視覚に自由を奪われ、も っと五感で感じる精神の高まり、身体本来に具わっている感覚 からくる歓びを失ってはいないだかろうか。 特に聴覚がもたらす、つまり音楽がもたらす高度な精神世界を 私は重要に考えている。 確かに建築の仕事は視覚の世界ではある。しかしよく言われる ではないか、「建築は凍れる音楽である。」と。 そこで私はそれを解凍するような気持ちで、音楽的アプローチ により、視覚の聴覚化、あるいは聴覚の視覚化といったものを 試み、聴覚的建築をつくりたいと願っている。 それにはヒトは如何にして聴覚から感応するのか、バロック音 楽、フラクタル幾何学、非線型複雑系思考、生物学的アプロー チによるDNAのプログラム、から探っていきたい。 したがって題して、“DNAからみた家づくり”となる。 2000年 6月19日 篠崎好明 |