このNHKの講演会のシリーズでは、私の敬愛す るもう一人の生物学者、本川達雄さんとも2ショ ットを撮るころができた。 本川達雄著の「ゾウの時間 ネズミの時間」は、 ウソッというほど面白く、近年のベストセラーと なる。まだお読みになっていない方にかいつまん でその一部を紹介する。まずは動物のサイズが変 われば時間が変わるということからはじまる。哺 乳類の体重と時間を測ってみると、時間は体重の 1/4乗に比例するという。 つまり、体重が16 倍に増えると時間は2倍に近く長くなるというの である。100年の寿命もあるゾウも、数年しか 生きないネズミも、その一生に心臓の打つ回数や 呼吸数はみな同じであるという。ゾウとネズミを 同じ高さから同時に落とせば、地面に落ちるのは |
たしかに同時である。物理的には同じ時間であっ ても、ゾウにとっては「お〜ち〜る」となり、ネ ズミにとっては「おちる、おちる、おちる」とな って、それぞれにとって生理的時間は異なる。そ して巻末には“一生のうた”という歌詞がのって いる。「一、ゾウさんも ネコもネズミも心臓は ドッキン ドッキン ドッキンと 20億回打っ てとまる・・・。」その他、植物はブロック造で あり、動物はラーメン構造であるとか、建築関係 にとっても面白い話が続く。 さてここで、前回にリストアップできなかったこ とを悔やむだけでなく、前回にリストアップして おいてよかったと、いささか得意となる出来事が あったこともご報告しよう。 1992年1月号のリストアップの中で、私は生 物界を面白く語る点で双璧をなすものとして、ス テイーブン・J・グールドとリチャード・ドーキ ンスをあげた。ところがその夏、おもってもみな かったことに、リチャード・ドーキンスの来日が あった。それは「英国科学実験講座」の講師とし ての堂々たる来日であった。その公開講座は若者 の夢をそだてるために、1826年マイケル・フ ァラデイーによって始められた科学イベントであ る。以来、英国で毎年クリスマスに、M・ファラ |
デイー、J・A・フレミング、W・ブラック、D ・アッテンボロー・・・等のそうそうたる人が講 師をつとめてきた伝統ある講座である。リチャー ド・ドーキンスはこの講座の162回目の講師と なる。これが日本で行われるとなれば、私として はなんとしても受講したい。ところが受講者は希 望者の往復はがきの抽選で決まるという。私は必 殺のおもいで、ちょっとアンフェアーかもしれな いが、この掲載誌、1992年1月号を送り付け 、受講希望を名乗った。ありがたいことに、白い 角封筒の招待状をいただき、このリチャード・ド ーキンスの講座を大変興味深く受講することがで きた。おまけにこの講座で実験協力をされた市村 禎二郎東工大教授のお誘いにより、講演後のレセ プションパーテイにも出席でき、ドーキンスと2 ショットを撮ることができた。 |