DNAからみた家づくり
                      形と大きさ 
SF映画や、建築造形で我々がとかく間違いやすいのは、形と大き
さの関係である。
例えば蛾の体長が50倍(仮に)になった、“怪獣モスラ”は、そ
の羽の面積は50×50で、2千5百倍にしかならないのに、その
体積≒体重は、50×50×50で、12万5千倍にもなる!
そうなるとモスラは、その体積を維持するための体表面積による皮
膚呼吸ではとても足りず、息もたえだえとなり、飛ぶことはおろか
重力に釘付けになりはいつくばってしまうことになろう。
建築家がデビュー作の自邸と同じような形で、そのままその高さや
幅を6倍(仮に)にした博物館をつくると、その建築物の自重は
6×6×6で、2百16倍となり、柱の長さは6倍だから、地震時
に受けるモーメント量は2百16×6で、1千2百96倍ほどにも
なる!
よほど建築素材を軽量化、強靱化かしたとしても、巨大に増幅され
た応力に耐えられるようにするには、構造設計は相当無理なことを
強いられることになる。私は地震時を考えると、そんな博物館には
恐ろしくてとても長居はできない。
ところで生物は進化の過程で、大きくなるにつれ、急激に増大する
体積に対して急速に不足していく体表面積の問題をどう解決したの
であろうか。古生物学者
S・J・グールドによれば、その不足して
いく体表面積を補う表面積を体内に陥入してつくり、それが肺や胃
腸の様な内部器官となったとのことである。グールドを引用すれば、
「内部器官を持たないサナダ虫は、長さは数フィートにもなるが、
厚さは1インチの何分の一かをこえることができない!」。
住宅に於いても、自然採光、自然換気、外の眺めを充分に採り入
れるのには、床面積に対し建築の外周表面積を充分に確保しなけ
ればならない。限られた敷地面積、建築面積の中で建築の外周表
面積を充分に確保するには、建築の外周壁を建築内に陥入してコ
ートをつくることである。

H型コートハウス1東京新聞'89年10月24日夕刊“サナダムシに学んだH型コートハウス”
コートハウスといっても、L字型であればコートに面するのは2面、ロの字型
ではコートに面するのは4面となる。ところがわがH型コートハウスは、コート
が2つ、コートに面するのは6面にもなる。ゆえにこのH型コートハウスはどの
部屋からも自然採光、自然換気、コートの眺めが得られる。
                      2001年6月9日 篠崎好明

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