技術が進歩して便利になるといろんなことができ て、なぜかかえって忙しくなる。多チャンネルテ ビ、携帯電話、パソコン、インターネット、それ らの便利な道具は獲得できても、それらを使いこ なす専用の時間は一緒についてはこない。一日は あくまで24時間しかなく、その便利道具を使い こなす時間が、確実に自分の有限な持ち時間から 差し引かれる。 この2年ほど、パソコンによる画像処理、インタ ーネットにハマリ、ホームページの制作、更新を している間に、読書や音楽鑑賞にひたる時間がめ っきり減ってしまった。私にとって読書や音楽鑑 賞の時間が、やはりもっとも精神的充足感を覚え る。この弊ホームページをご覧になっている方に は申し訳ないが、弊ホームページもある程度形を 成してきたので、更新も少しペースダウンして、 また読書、音楽鑑賞にひたっていきたいとおもう このごろである。(もちろん本業の住宅設計監理 は天職として、ますます全うしていくつもりなの で、お施主さん、ご安心ください。) そんな心境で久しぶりにオーデイオアンプのスイ ッチを入れたら、かまってもらってなかったアン プがへそを曲げたのか、右チャンネルから全く音 が出なくなってしまった。このアンプは押しかけ 女房のように我がオーデイオシステムに納まり、 私のお気に入りとなって十数年来の古女房でもあ る。この押しかけ女房のアンプの由来を申し上げ る。それまでは我が愛聴スピーカー、 |
をドライブするアンプは管球式プリメインアンプ GOODMANS AXIOM80 「ラックスSQ−38FD」であった。 このアンプはたまたまハズレだったのか、きゃし ゃでよく故障し、「AXIOM80」との相性の せいか、音も硬くて薄かった。 私の敬愛するオーデイオの先輩Yさんにこの不満 を訴えた。しばらくしてある日突然、Yさんから 「アンプづくりの名人に頼んで、篠崎さんの、 「AXIOM80」を鳴らすアンプができました |
から、これから持っていきますね。」との電話が あるやいなや、拙宅にYさんと名人Nさんがアン プ持参で押しかけられた。 そのアンプの姿は、ラワンの木箱ケースで、アル ミのフロントパネルには電源スイッチとヴォリュ ームつまみ2個とセレクターつまみが1個しかな い。「38FD」の、ローズウッドケースとアル ミ引き抜きシャンペンゴールドフロントパネルに ものものしいトーンコントロールつまみのついた 姿とくらべると、だいぶ貧弱に見えた。 しかしこのアンプを接続、鳴らしてみると、 「AXIOM80」は幾重ものベールを脱ぎ捨て、 細身ではあるがしなやかでふくよか、目鼻立ちク ッキリと鮮明な音の姿に変貌して現れた。 YさんとNさんは黙ってニヤニヤしながら聴いて、 互いに顔を見合わせ、「これだとさあ、金だけか けて、いろいろいじくってオーデイオに悩んでる 人、可哀想ね!」。 御大お二人がわざわざ私のために、と感謝する一 方、なんのことはない、どうもお二人は、 「AXIOM80」がどんな風に鳴るのかという 好奇心からによるものとおもわれた。 |