本コンテンツ内の画像はイメージであり、当事務所で建築・設計していないものも含まれます。
公開日:2019年01月11日
こんにちは、横山 浩介です。
お施主さんと打合せをしていると、皆様、地震に対する強度(耐震性)へのご関心が強いように感じます。
30年以内に南海トラフ大地震が発生する確率は70%と言われています。
今、家を建てれば30年はお住まいになられると思いますので、つまり、これから建てる家は70%の確率で南海トラフ大地震を経験することになり、倒壊・崩壊は100%の確率で回避しなければならないので、心配になられて当然ですよね。
そのような訳で、今回は耐震性について見ていきたいと思います。
地震に強い、弱いと言っても、そもそも元の基準がよく分かりませんよね。
「地震に強くもなく、弱くもない普通の家の強度はどんなものなの?」
「普通レベルで家を建てた場合、大きな地震が来たら家は倒壊・崩壊するの?」
「どのくらいの震度なら耐えられるものなの?」
そのようなところから見ていきたいと思います。
まずは東日本大震災の状況から確認していきます。
引用:3.3 物的被害の状況 3.3.1 建物被害 – 総務省消防庁
http://www.fdma.go.jp/concern/publication/higashinihondaishinsai_kirokushu/index.html
地震動により被災した建物の建築年度を調べると、旧耐震基準で設計された建物に被害が多い。
適切な耐震補強・改修が施された建物の多くは被害を免れており、耐震補強・耐震改修の有効性が確認
新耐震基準で設計された建物は、構造部材に軽微なクラックや、コンクリート落下などはみられたものの、主体構造の被害はほとんどなかった。
⇒新しい家の多くは大丈夫だったようですね。
上記は木造・RC(鉄筋コンクリート)造など様々な構造が含まれていますので、木造住居だけの状況を見てみましょう。
(1)地震の揺れによる被害
地震の揺れによる住居建物を主とする木造建物の被害は広範囲に確認されているが、甚大な被害を受けた木造建物は、建設年代が比較的古く、老朽化していたと考えられる建物が多かった。
(2)地盤の液状化による被害
地震の揺れによって広範囲で砂質地盤に激しい液状化が生じ、これに伴う建物の全体傾斜や沈下が被害につながった。
(中略)
また、液状化が発生していなくても、軟弱な地盤では地盤の亀裂等を生じ、上部構造の不同沈下等の被害につながった事例がある。
⇒やはり古い住居は被害を受けやすく、また、建物自体の要因以外の「地盤」によっても被害が出たようです。
新耐震基準により設計された建物の構造被害はほとんどみられていない。
旧耐震基準により設計された建物は、一部に大破や層崩壊などの被害が発生した。
⇒こちらも新しければほぼ大丈夫だったようです。
少し逸れますが、上記に「新耐震基準」「旧耐震基準」という言葉が出て来ましたので、「耐震基準」について見てみましょう。
耐震基準とは、1950年(昭和25年)に制定された建築基準法の中の基準の一つで、
「新しく家を建てるときに○○の強度以上であれば建てて良いですよ」
というような建築を許可するための耐震能力の基準を指します。
この耐震基準は大地震が起こるたびに改正されています。
1981年(昭和56年)の宮城県沖地震より特に大幅な改正行われ、これを受けて改正前を「旧耐震基準」、改正後を「新耐震基準」と呼ぶようになりました。
さらに1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災を受けて2000年に一部改正され、「2000年基準」や「新・新耐震基準」などとも呼ばれています。
・震度5程度の地震でも「倒壊・倒壊しない」
・震度5程度の地震でも「ほとんど損傷しない」
・震度6~7の地震でも「倒壊・崩壊しない」
東日本大震災で被害を免れた「新しい家」は全て2000年基準をクリアしていたということになり、震度6~7の地震でも倒壊・崩壊しない強度を持っていたことになります。
今度は熊本地震の状況を確認してみます。
出典:【国土交通省】国土技術政策総合研究所
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160630kumamotozisinniinnkai_handouts.htm
⇒2000年以降に建てられた家のうち、242棟中7棟(2.9%)が倒壊・崩壊しています。
割合は少ないですが、0件ではありません。大破も10件(4.1%)あります。
引用:【国土交通省】住宅・建築物の耐震化について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
阪神・淡路大震災
・死者数の大部分が建物等の倒壊が原因
⇒命を守るためにも倒壊だけはあってはいけないですし、経済面から大破もあってはなりません。
2000年以降に建てられた家やこれから建てる家は、震度6~7の大地震が来ても、基本的には倒壊・崩壊はしない。
ただし、100%安全ということではないので、耐震基準を上回る耐震性を目指すのが望ましい。
住宅では「木造」「鉄骨造」「RC造」という3つの構造が一般的です。
一般的には、耐震強度としては「木造」<「鉄骨造」<「RC造」と言われています。
(RC造が一番地震に強い)
↓上記コラムからの引用
RC造の中でも住宅等の低層や中層の建物に適している壁式RC構造は、壁と上下階の床スラブの6面で構成されたモノコック構造です。
モノコック構造は力が構造の一点に集中せず、“面”全体に分散してバランスよく受け止めることで高い強度を保ちます。
一般的な木造建築の、柱・梁で構成される「軸組み構造」では構造部材を“点”で接合するため、力が接合点に集中してしまいます。
⇒RC造では、倒壊・崩壊、大破までの被害を受けることはまず無いと思います。
(全く損傷がないということではないと思います)
鉄骨造は、柱や梁などの主要構造材を鉄や鋼でつくった構造になります。
主要な軸が鉄となり、地震ではまず折れないため、倒壊するリスクは低いです。
⇒鉄骨造では、倒壊・崩壊、大破までの被害を受けることはまず無いと思います。
(全く損傷がないということではないと思います)
ここまで構造ごとに見て来ておりますが、念のため再度振り返っておきます。
どの構造で建てたとしても、原則として震度6~7の地震では倒壊・崩壊しません。
倒壊するような家を建てることは法律で禁じられております。
東日本大震災の事例では242棟中7棟が倒壊・崩壊しておりましたが、それらの建物には普通ではない何かしらの問題・欠陥があったから、倒壊・崩壊したものと考えられます。
理由はそれぞれでしょうが、もっとも考えられる理由としましては、「十分な構造チェックを怠った」というものが挙げられます。
2階建ての木造住宅(500㎡以下)などの場合、役所への(家を建てますという)申請時に構造関係の提出が免除されています。
建築基準法には構造関係規定が定められているので、それらを全てクリアしなければ建築できません。その申請が免除がされているのは、あくまで建築士の設計であれば構造関係規定は遵守されているはずであるという前提に基づいたものであり、申請をスムーズに行うための特例です。構造計算の提出義務が無いからといって、構造チェックをしなくて良いというわけではありません。
当然のことでありますが、当事務所では、どの構造のどの家の設計でも構造事務所による構造計算をして安心で安全な建物をご提案しています。
⇒木造では、倒壊・崩壊、大破までの被害を受けることはまず無いと思います。
(全く損傷がないということではないと思います)
既に「どの構造であろうと、震度6~7の地震では倒壊・崩壊、大破までの被害を受けることはまず無いはず」という結論は出ていますが、木造についてもう少し見ていきたいと思います。
木造には主に「在来軸組工法」と「枠組壁工法」の二つがあります。
柱と梁を組み合わせて構造を支える仕組みです。
北米で生まれた工法で、ツーバイフォー工法が有名です。
ツーバイフォー工法では2×4インチ(ツーバイシックス工法は2×6インチ)の枠材でつくった「枠」に、構造用合板を貼り付けて「パネル」を作り、このパネルを組み立てて作ります。
床や壁などの「面」で構造を支える構造です。
面でしっかりと支える分、枠組壁工法は耐震性が高いと言えます。
ただし、在来軸組工法に比べ、枠組壁工法には大きな開口部を取りづらいなど、設計自由度が低く、リフォームの際などにも間取りの変更がしにくいなどの欠点もあります。
(ハウスメーカーなどではなく)設計事務所に依頼をしようとご検討のお施主さんは、
「開口が大きく、明るく開放感のある家がいい!」
とご要望される方がほとんどです。
この開口と耐震性は(原則として)反比例の関係にあります。
開口を大きくすればするほど(何も考えなければ)耐震性は下がります。
ただ、だからといって、大きな開口も耐震性も妥協しません。
大開口と耐震性を両方しっかりと確保する、ここが私ども設計事務所の腕の見せ所の一つになります。
あくまで一例ですが、在来軸組工法の場合、設計によっては接合部に不安が出る場合もあります。
そういった場合は、安定した強度を確保するため接合部に金物を用いる金物工法を取り入れたり、
金物工法のメリット
耐震性・安定した強度の実現従来の木造軸組み工法では柱・梁の接合をする際に柱をくり貫き、そこに先端を細くした梁を組み合わせるなどするため、木材の欠損部分が大きくなります。
そのため、構造によっては、地震などの「揺れ」に対して接合部の強度が不足する場合があります。
それに対して、金物工法は断面欠損が小さいため、接合部の強度を高めることができます。
また、接合部の耐力が数値で明確化されているため、ブレのない安定した強度を実現することができます。
繰り返される地震の揺れを抑え、構造体(建物)を損傷させる力を弱めるため、制震ダンパーという装置を取り付けたりするなど、
↑バイクギャラリーのある住まい「Moto Gallery」には制震ダンパーを設置しています。
確固たる耐震性を実現すべく最適な方法を模索します。
上述の「東日本大震災の建物被害」の項目で、軟弱な地盤の影響で全体傾斜や沈下が有ったという記載がありました。
いくら屈強な家を建てても、地盤が軟弱では大きな被害が出てしまいます。
*家が屈強であればあるほど家が重くなり、しっかりとした地盤が求められます。
家を建てる前に地盤調査を行い、地盤の耐力がどのくらいあるかを調べます。
その地盤データを基に構造事務所と検討を行い、必要によっては計画建物に対して最良な地盤改良を選定します。
↑吹き抜けるリビング「White Valley」では地盤補強を行いました。
もし「補強をするほどではないけど少し心配」という場合には、住宅保証機構が提供している「地盤保証制度」などに加入するというのも一つの選択肢になります。
住宅保証機構「地盤保証制度」
地盤調査または地盤工事の瑕疵に対する、補修費用を保険がサポートします。
地盤調査や地盤補強工事の瑕疵により、住宅が不同沈下した場合に、地盤調査会社等による地盤保証がより確実となるよう、保険等によりバックアップするしくみです。
保険期間は、着工日から始まり引き渡し後10年間。保険金支払い限度額は1工事あたり5,000万円まで。
想定通りの耐震性を確保するためには工事監理も重要です。
そのため、当設計事務所では施工現場に頻繁に赴き、構造設計通りに施工できているかを工程ごとに非常に細かく監理します。
掘削した時の地盤の状況、砕石の締め固め状況、鉄筋の品質や配筋状況、コンクリートの品質や施工状況などの確認をします。
コンクリートについては事前に配合計画書を提出してもらい、品質を確認し、コンクリートを流す前にもスランプ試験という試験をして品質を確認します。
木造においても同様で、構造設計の施工要領の通りに構造材や金物が施工されているかを検査をします。また、設計時に計画した設備の配管や配線ルートも確認し、構造材の断面欠損等が無く適正に施工されているかを確認します。
設計図通りに施工するのは当たり前のように感じるかもしれませんが、実はこの作業は本当に苦労が多く、スムーズにいかないことが多いです。
それでも粘り強く交渉し、どんな細部でも決して妥協することなく、時にやり直しをして頂くなど厳しく監理することが構造計算通りの強度を実現するためにとても重要な要因となります。
「構造計算」「地盤調査」「工事監理」、この3つを妥協なくしっかりと行うことが重要です。
また、「費用」「開口」「耐震性」「設計者の知識・経験」の4つのバランスが非常に大切です。
お施主さんのご要望に合わせて最適なバランスを取り、「強く明るくコスパ良く、そして何よりカッコイイ!」そんな家にできるように一棟入魂の精神で臨んでいます。
ご相談はこちらから。まずはお気軽にどうぞ。
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公開日:2019年01月11日
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